『 アニメ 86-エイティシックス- 第1話 アンダーテイカー』の感想です。
豚扱いされ命を軽んじられ戦場へ駆り出される人々と、その戦士たちに人として向き合おうとする指揮官の少女の物語。真向なハードSFアニメの開幕です。
あらすじ
白銀の髪を持つ人々の国・サンマグノリア共和国。
サンマグノリア共和国はその日も帝国による襲撃を無人機・ジャガーノートで撃退したことを報道し、大々的に勝利を報じていた。
主人公でありサンマグノリア共和国軍人・レーナは軍本部で昼間から酒を喰らう腐敗を体現したかのような軍人たちであふれかえっていた。さらに、ジャガーノートの操縦士<プロセッサー>である86区住人たちを豚と称して侮蔑してはばからない軍人たちに、義憤を覚えるレーナだったが、友人・アンリエッタに制止される。
そして、レーナはジャガーノートの部隊の指揮<ハンドラー>の仕事を開始するが、物思いにふけってしまう。
曰くレーナは異動を命じられるとのことだった。その部隊は古参兵を集めた精鋭部隊、その名も『スピアヘッド隊』。しかし、その部隊隊長のプロセッサー『アンダーテイカー』は「ハンドラーを破壊してしまう」と言う噂から「死神」と称される人物だった。退職をするだけならまだしも、自殺者も出ているというのっぴきならない話ではあったが、レーナは誇り高き共和国軍人としてそれを引き受ける。
レーナはアンリエッタの検査中に異動と死神の話を持ち掛ける。すると、研究所勤めのアンリエッタ曰く、そのアンダーテイカーの死神疑惑については研究所としても調査が入ったとのことだった。
当事者は自殺、アンダーテイカー自身も確かな応答をしなかったという状況もあり、調査はハンドラーとプロセッサーの通信機器<パラレイダー>にまで及んだが、調査はそのままお流れになってしまったという経緯があった。
アンリエッタはこのパラレイダーの開発者の娘ということもあり、パラレイダーにはそれなりに思い入れがあったのだ。
それでも引き受けるというレーナに、アンリエッタはシフォンケーキやシュークリームを御馳走になる。それは、合成食品ではなく、本物の卵や牛乳を使った一品だった。
そこで、レーナは回顧から戻り、ハンドラーとしての仕事に戻る。そこでは、多くのプロセッサーが死亡し、レーナはその死を悼む言葉を書けるが、逆にプロセッサー側からは冷淡に扱われ、死神の率いる部隊のハンドラーになるということで、かえって厳しい言葉をかけられることに。
一方のアンダーテイカー率いる『スピアヘッド隊』。アンダーテイカー、またの名をシンは読書をたしなんでいたが、それ以外の面々は掃除中に遊んだり、飼っている鶏を追い回して卵を得ようとしたりと、にぎやかで明るい日常を送っていた。
そして、ハンドラーのいたずら書きをしては、壊れるたびにバツを着けたり、逆にハンドラーを白豚呼ばわりして暮らしていた。
それでも重要拠点防衛ということで熾烈を極める戦闘で、スピアヘッド隊の一人が命を落とす。息も絶え絶えの部下に、シンは自らでとどめを刺し、その機体のエンブレムを切り取って、仲間の名前を彫り込んでいた。
そこに、レーナからスピアヘッド隊にパラレード通信が入る。レーナは変わらず誠意を持って接する。
スピアヘッド隊の任期は残り129日。これを生き延びれば、生きて戦場から帰れる。
用語増やしたがりの説明不足
あらすじを見ていただければ分かるかもしれませんが、このアニメにはカタカナの専門用語が豊富です。
カタカナ用語を増やしたがるのは、いかにもライトノベルっぽいと感じました。本作は電撃文庫というライトノベルの中でも超メジャーブランドの一作です。電撃文庫と言えば『とある魔術の禁書目録』、『ソードアートオンライン』などがとくに有名でしょうか。
おそらく原作では漢字にカタカナでルビを振って、これらの専門用語を出していたのだと思います。
原作がこれらの用語の説明をどうこなしたのかはわかりませんが、アニメでは完全に用語の説明不足に感じました。彼らにとってはごく当たり前だが、我々にとっては訳の分からないカタカナ用語が飛び交っている状態でした。
そもそも、タイトルになっている『86』についてもまともに説明が無く、無人機・ジャガーノートに人が乗っているという事実も当たり前のこととして流されて行くようでした。
幾らなんでもこのレベルの説明不足だとかなり危ういという印象を持ちました。
アニメは文字情報が一切なく、スピードをコントロールできないので、ポンポン専門用語を出されると視聴者としては困惑してしまいます。
テンポとしては悪くなく、見ていてストレスのたまらないスピードとは言えました。細かい用語を追っかけず、多少バカになって視聴するくらいならば、これくらい説明が無くてもいいかもしれません。
詳しく用語の取り扱いを知りたければ原作を読めということなのかもしれませんが、だとしてもちょっと厳しすぎやしないか?と言う感じはしました。
作画がよいから演出をもっと派手でもいいかも
作画はかなり綺麗で、線も全体のバランス、光の質感、どれをとっても、非常に良い出来だったように感じました。
冒頭の戦闘シーンでもかなり快調に動きが出ており、作画面での不安はないように感じました。
ただ、厳しめなことを言うと、そつない作画にまとまってしまっていて、少しつまらない映像になってしまっているとも感じました。
とりわけ、KOHTA YAMAMOTOと澤野 弘之という豪華作曲家を揃えたにもかかわらず、BGMの自己主張が控えめだったのは驚きでした。
この二人は最近では『進撃の巨人』で作曲をしており、『Ashes on Fire』はFinal SeasonのPVで使用され、強いインパクトを残した曲となりました。
この二人をせっかく起用したのならば、もっとBGMの自己主張を激しくしても良いように感じたのですが、そこまで自己主張が強いようには感じられませんでした。
二人の作曲はインパクトの強いシーンで本領を発揮するので、まだ1話目では本領を発揮しきれていないとも見ることができるので、そこに関してはもう少し静観を貫く必要があるかもしれません。
また、画面構成でもあまり冒険することなく、比較的おとなしい画面構成に収まっていました。
原作がライトノベルですから、画面は0から作り上げていかなければならず、その分、無難な映像になってしまうのは仕方ないのですが、もっと色々やってほしいと思ってしまいました。
終わりに
1話の出来としては良くも悪くもそつなく、原作通りに進めていると言った印象でした。
ただ、先に述べた通りこれらはかなり辛口な評価です。それだけ欲をかいてしまえる程度に、作画能力が高く、安定したアニメを観られるという安心感があります。
私が今季見ている他のアニメ(『ヒロアカ』『東京リベンジャーズ』『すばらしきこのせかい』『SHARMAN KING』)と比べても、作画・テンポの面で抜きんでていると言っても過言ではないと思います。
ぶっちゃけかなり完成度の高い作品には仕上がっていると思います。説明抜きで視聴者を置いて行ってしまうのも、話数が進んでいくうちに、新用語が出て来なくなってくると、気にならなくなってくるでしょう。
とはいえ、BGMに関してはせっかくのコンビなので、インパクトに残る「86と言えばこの曲だな」という一曲をお披露目してくださると言いな、と期待しています。ここだけはアニメサントラ好きとしては外せない一点です。
今後も、かなり高い期待を持って視聴させていただこうと思います。