『パシフィックリム』シリーズ最新作『暗黒の大陸』の公開が間近(3/5)に迫っています。
率直に申し上げて、「不安」な作品です。
それ単体で見れば、それなりに面白い作品として観られたのかもしれません。ですが、オリジナル版『パシフィック・リム』の完成度と、その続編『アップ・ライジング』で感じた「なんか違う感じ」を踏まえて言えば、とても不安な作品になってしまっています。
PVを見ての率直な感想
まずは、『パシフィック・リム』というところから離れて、この作品が、完全新作アニメだという観点でPVを見て、感想を述べようと思います。
かなり断片的な情報をつなぎ合わせると、なんとなく以下のようなあらすじが考えられます。(あくまで憶測であることに注意)
あらすじ
舞台はオーストラリア。とある幼い兄妹はイェーガーパイロットである両親と共に都市から離れ、隠れ暮らしていた。
しかし、ある日「助けを呼ぶ」と言って両親は去ってしまう。
いつまでも帰って来ぬ両親を待つ間に、成長していた兄妹は、地下に格納されていた訓練用イェーガーを発見し、怪獣を撃退する。
そして、行方知れずとなった両親を求め、崩壊した都市に戻る。しかし、そこは小型怪獣が跋扈する地獄だった。
その都市の中で、不思議な少年と出会う兄妹。
更に、そののちに、『暗黒の大陸(=オーストラリア)』の外から来た人間に尋問され、敵対関係に陥ってしまう。
話のゴールとしては
- 襲い来る怪獣の撃退
- 外部の人類との敵対関係の解消
- 謎の少年の正体を探る
- 消えた両親の消息を知る
の4つになるでしょう。
感想
少なくともPVだけでは、分からないことだらけと言った印象でした。シナリオは謎が多いですが、きちんと整合をとってくれれば、まぁまぁ楽しめそうです。
CGの感じは、『シドニアの騎士』やアニメ版『GODZILLA』と似ているように感じました。(調べてみると同じ、ポリゴンピクチュアズという会社の製作でした)
動きが少しぎこちないように感じる箇所が多かったのはマイナス点です。
影や質感は、アメコミ風のベタ塗と言う感じで、色のセンスもいかにもアメコミ・カートゥーンと言った風でした。
正直、今時、もっと質の良いCGなんていくらでもできそうなものなのですが、どうしてそうならないのだろう?と思うほどでした。
『ロア』というイェーガー搭載AIとのやり取りで顕著でしたが、せりふ回しが(ちょっとうざい)いかにもアメリカンな乗りでした。別にアメリカンジョークが嫌いなわけではありませんが、アメリカの映画やドラマにみられるちょっと「鬱陶しい」会話の雰囲気が感じられたということです。
妹のセリフ回しは特にこのアメリカンな雰囲気が強く、日本国内では「うざい」と言われて嫌われてしまうことも多いのではないかと変な心配をしてしまいます。
全体を通していかにもなアメリカ製ロボアニメといった感じです。アメコミに慣れ親しんでいない私は、少し苦手な雰囲気かな、と思いました。
また、PVも断片的で困惑します。なんとなく情報は補完できますが、日本のアニメのPVの様に、丁寧に世界観や状況を説明してくれるものではありません。アメリカのPVと言うのはこういう物なのでしょうか。
ただ、これならば、どちらかと言うと4月から、同じくNETFLIXで公開される『ULTRAMAN』の方がまだ安心して見られそうかな、と感じました。
その理由としては
- グラフィックの質が『暗黒の大陸』よりも質が高い
- 日本の漫画が原作である
という点です。
ただ、動きのぎこちなさはどちらも気になりはしました。
パシフィック・リムシリーズとしての評価
PV単体で見ると、動きがぎこちない事に目をつぶれば、アメリカロボアニメとして観られないこともないような気がしました。
ただ、これを『パシフィック・リム』シリーズの一作としてみると、急に不安が顔を出してきます。
オリジナル版『パシフィック・リム』はコンセプトこそB級映画そのものであるものの、ギレルモ・デルトロ監督の日本愛やオリジナリティ、センスの良さを感じさせる作品でした。
既存のデルトロファンからは「浅い」と酷評されたり、核の力で怪獣たちの本拠地を破壊するエンディングについて物議があったりした点は認めます。
ただ、それでも、細かい点に様々な配慮がされ、子供の夢をそのままスクリーンに映し出したような「ロボVS怪獣」の映画であったことは間違いないと思います。
このオリジナル版の『パシフィック・リム』の魅力については、後日、別の記事で語ってまいりたいと思います。
その続編『アップ・ライジング』も、分かりやすい構図を踏襲しつつ、前作のキャラクターを巧妙に配置して、面白い映画になっていたとは思います。ですが、『アップライジング』は「これじゃないよな感」が随所で感じられる仕上がりでした。
東京や富士山を舞台に戦うものの、日本人からすると「日本じゃないよな」と思ってしまうような映像を「日本です」と言われてしまいます。
その上、戦うイェーガーは前作と比べると人の形にとても近い物になってしまっているのも難点でした。
そして、シナリオやせりふ回しは「うざい」アメリカの感じがにじみ出ていました。
結果、チャイニーズ東京で凡庸なデザインのロボが殴り合う「アメリカン」な映画になってしまっていました。
全ての映画が日本人のセンスに合わせて作られるべきだと言いたいわけではありません。ただ、二作目では、一作目で気配りされていた細かい要素が消えたことで、「一作目ってすごかったんだな」と思わせる引きたて作品になっていました。
その延長線上で、さらにアメコミ・カートゥーン調の映像を見せられれば、不安になる私の心情にもご理解いただけると思います。
また、アニメ版『GODZILLA』が脳裏をよぎるのも不安になる一因です。アニメ版『GODZILLA』とは製作体制が異なるでしょう。
共通点は
- ネットフリックスで配信する
- ポリゴンピクチュアズの製作
- 怪獣アニメ
というぐらいなのです。
ただ、『パシフィック・リム』は日本文化に慣れ親しんだデルトロ監督の作品でした。一方のゴジラも、元は日本の映画です。
オリジナルが持っていた「日本らしい良さ」と「怪獣映画としての魅力」を踏みにじられたのが、アニメ版『GODZILLA』でした。なので、その二の舞になってしまうのではないかという懸念があるのです。
終わりに
不安を煽るのは(炎上商法っぽくて嫌なので)嫌いなのですが、今回ばかりはちょっと気になってしまいました。
作品単体で見ると、グラフィックの粗さ、動きのぎこちなさとアメリカンな雰囲気が気になるアニメでした。
特に、グラフィックに関して言えば、ゲームの圧倒的なCGに慣れてきた人には陳腐に見えてしまうでしょう。
ただ、『パシフィック・リム』シリーズの一作としてみると『アップ・ライジング』という(やや悪しき)前例が存在しているのでとても不安な作品というのが正直な感想でした。
NETFLIXは日本への本格的な進出を狙い、アニメコンテンツを大量に製作しているものの、イマイチどれも、日本人にピンと来ない作品ばかりになっています。
いかにもな「アメリカン」な雰囲気から脱却して、ジャパニメーションに到達するのにはまだまだ時間がかかりそうです。
そのために、『ULTRAMAN』も『暗黒の大陸』も踏み台にされてしまうのかと思うと、少し悲しい気持ちになるのでした。
だってこの日本語見たら不安になるでしょ…。