あらすじ
ついに始まってしまった東京卍會と『メビウス』との抗争。ドラケンを助けようと探し回る武道だったが、ドラケンを発見したときにはすでに手負いで気を失っていた。しかし、ドラケンは辛うじて生きていて息を吹き返す。
マイキーはドラケンの救援に向かおうとするが、メビウスに阻まれ手が出せずにいた。さらに、メビウス仮総長・半間との交戦に突入し、ドラケンのもとへ駆け寄れなくなってしまう。
そんな状況でマイキーはドラケンの命を武道に託す。マイキーの願いを受けた武道はドラケンを担ぐと、病院までの道を歩き出す。
そこに、日向とエマが追いつく。救急車を呼んだという日向の話を聞いて、武道はドラケンを下ろしてここで待つという選択をとる。
しかし、抗争現場から抜け出してきたキヨマサ達が現れる。とどめを刺しきれなかったドラケンに手を下すため、キヨマサは追ってきたのだ。
キヨマサの登場に青ざめる武道。その武道に、ドラケンは女性二人と共に逃げろと言うのだった。
瀕死の重傷人に庇われるというあまりに自分のみじめさに唖然とする武道。
思い返せば、すべては自分が始めたことだった。拳一つで成り上がりたいと言って友人たちと共にキヨマサ達に喧嘩を吹っかけ、敗北し、そこからみじめな人生が始まった。
その敗北を、キヨマサを乗り越えるために、他の皆を助けるためではなく、自分自身の為の戦いであると認識する武道。そして、この戦いを武道は自分の人生のリベンジと呼ぶのだった。
そして、キヨマサに喧嘩賭博の時にふっかけたタイマンの決着をつけようと申し込むのだった。喧嘩賭博の際のタイマンは、マイキーとドラケンの乱入で決着こそついていなかったが、手も足も出なかった武道の敗北であるとあざ笑うキヨマサ。
しかし、ドラケンが、日向が、エマが、武道の勝利に賭けると言って武道を応援してくれる。
覚悟を決め、キヨマサとの対決に挑む武道。しかし、キヨマサはドラケンを刺したドスで武道のことも貫こうとしていた。瞬間、何とか掌でドスを受け止め、命は助かった者の、ドスは掌を貫いてしまう。
それでもひるまず武道はドスを抜いてキヨマサに食いつく。しかし、体格で圧倒するキヨマサに、武道はドンドンと追い詰められていく。
それでもなんとか武道は首絞めに持ち込み、キヨマサを敗北させることに成功する。
しかし、武道に勝利の余韻に浸っている時間はなかった。キヨマサの取り巻き4人と戦わなくてはいけない。
何とか立ち上がったドラケンと武道で残り4人を受ける形になり、ここで2人は日向とエマを逃がす。
軽口をたたき合うが、圧倒的不利な状況で死すら覚悟する2人。そこにアッくんたち武道の悪友4人が乱入してくる。4人は日向からの連絡を受けて駆け付けたのだった。
武道とドラケンを守ると威勢よく飛び出したものの、戦いは一方的なモノになった。一方的に殴られる悪友4人だったが、それでもドスを弾きとばすことには成功し、何とか殴られ続けることで時間を稼ぐことはできた。
そして、救急車の音が近づいて来る。それは、武道にとって勝利の音だった。
日向頼りのリベンジ
自分の人生のリベンジと啖呵切った武道ですが、その内容のほとんどは結局、日向頼りな印象でした。
確かに、宿敵・キヨマサを倒すことには成功し、掌にも傷を負う名誉の負傷を負いこそしましたが、救急車を呼んだのも、悪友4人を呼んで時間を稼いでくれたのも日向です。
もし日向が救急車も悪友4人も呼んでくれていなければ、ドラケン担いだ武道がキヨマサに追いつかれてボコボコにされるという悲惨極まりない状況に陥っていました。
武道の携帯がどうなったかの描写は無く、良いところで山岸から電話がかかっていこうお役目が無くなっていますが、武道も携帯を所持しているはずです。(キヨマサに捕獲されたときに破壊されていなければ)
なので、ドラケンに連絡したり、自分で救急車呼ぶなりすればいいものを、徒歩でドラケンを運ぶという決断に至った理由が知りたいぐらいです。
一応、ドラケンをあの乱闘の場から引き離すことで、安全を確保したいという狙いはあったと考えられるので、そう言う意味では一定の効果を果たしたのかもしれません。もし、ドラケンが抗争現場で瀕死の状態であることが全体に知れ渡れば、メビウスの的にかけられる可能性は高いからです。
ただ、それでも、なんで救急車すら自分で呼ばずに徒歩で行っちゃうのかなと思いました。
キヨマサとの対決・宿敵との勝利と言うのは大変めでたいですし、武道も頑張ったとは思うのですが、ドラケンを助けるという観点で言うと、日向の方がよっぽど役立っているような感じがしてしまい、「しょせん無能主人公か」と思ってしまいます。
抗争を止めるについてもドラケンやマイキーに頼み込むばかり、喧嘩になればボコられるばかりで活躍が無かったところから、キヨマサをタイマンで倒すという展開は熱い逆転の展開と言えるのですが、今までの負債が大きい事や、サポートで駆け回っていた日向の機転の果たす役割が大きすぎることがあだとなり、「無能主人公・武道」の烙印のイメージが強くなってしまっています。
次の戦がどういった展開になるかはわかりませんが、次こそは武道が勝利をもぎ取ってほしいと思ってしまうのでした。
キヨマサに勝利したことで
武道自身が回想していた通り、武道の転落はキヨマサに敗北したことから始まりました。
そして、自力でキヨマサに勝利したことで、現在の武道の処遇がどうなるのかが気になります。上手くいけば武道自身が東京卍會幹部になって豪奢な暮らしを送っているというのも夢じゃありません。
ただ、この手のタイムリープ作品では、世界自体が特定の人物に殺意を持っているんじゃないかと思うほど、何を改変しても変わらない状況と言う物があります。
この作品では
- 日向の死
- 武道は落ちぶれる
の2つは最後まで改変できない状況として存在してしまうのではないかと思います。
先ほどは散々役立たずと罵りはしましたが、武道は日向の前でかなり男気を見せたと思います。その日向と武道が分かれること自体がかなり不自然な状況になってしまうとは思いますが、おそらく書き換わった現在になっても武道は日向と別れて、音信不通になってしまっていると思います。
その間の12年間がどういう描かれ方をするのか、どういう風に落ちぶれるのかをきちんと描いてくれるかで、今後の私の中での本作の評価は大幅に変わってくるので、そこはきちんと描いてほしいとおもっています。
逆に、現在が大幅に書き換わって、落ちぶれフリーターだと思っていた相手が寝ている間に東京卍會の大幹部になっていたら、直人がどういう顔をするのかが気になります。
直人は過去が改変されて、現在が書き変わっても、書き変わる前の記憶を保持しているという結構稀有な能力を持っているので、その驚き方をできる人が他にはいないので、是非、大幅に現在が書き変わって、驚く直人の顔が見てみたいと思いました。
もうかなりメチャクチャ
今までサスペンスとして、それなりに話の筋を通してきた気はするのですが、ここにきてかなりご都合がまかり通るようになってきた気がします。
物語である以上、多少のご都合は目をつぶる気でいます。ですが、今までしっかりとサスペンスをやってきて、きちんと物事を積み上げてきてくれたと感じさせてくれていたのが『東京リベンジャーズ』の魅力でした。
それが、結構な勢いでご都合主義で物事が進んでいくために、段々と追いつけなくなっていったという感覚が出てきました。
今回の抗争、いくら雨の中とは言え、誰も警察に通報していないというのがおかしな話です。暴走族の抗争は見て見ぬ振りする世界なんだ、と言われればそれまでですが、前回『メビウス』と抗争をしたときには廃工場と言う人目につかぬ現場であったにもかかわらず、警察が駆けつけました。
さらに、武道とキヨマサがあれだけ路上で乱闘していれば誰かしら気付くと思われますし、女性なら、手あたり次第近所のチャイムを鳴らしてでも救出を願い出るのが普通のような気がします。
さらに、日向は武道との合流前に救急車と悪友たちへの連絡を済ませています。その時、武道は移動中であり、何処へ向かったかもかなりあいまいな状態です。そんな状況で、武道の位置を特定して追いついて来るだけならまだしも、救急車と悪友たちに的確な場所を指示できる日向はエスパーか何かなのかと思ってしまいます。
物事には過程があり、その過程と積み上げをしっかりしていないと、不満を感じてしまう私にとって、本作はそこをしっかり描いてくれる期待の一作でした。本作はその期待には応えてくれなかったと感じてしまっています。
終わりに
今回の1話で武道の不適格な判断や、ご都合展開がいよいよ強くなってきて、魅力が少しずつはがれてきているように感じました。
サスペンスと言うリアルよりな作風なだけに、過程におけるリアルを追求してしまう私の期待のハードルが高すぎたというのもあるのでしょうけれど、少し残念な気持ちがありました。