あらすじ
ホークスは山奥の屋敷へと向かう。そこは『解放戦線』の本拠地。そこには死柄木こそ不在だったが、『敵役連合』の面々も会議の席に並んでいた。ホークスは手短に報告を済ませる。さらに、ホークスは「解放思想」不況のためにと本をせっせと配っていることを評価される。
ホークスは会議室を出る時、扉の間に羽を一枚挟み込んで、その羽を通じて中の様子を盗聴する。そして、四か月後の決起の情報を得たのだった。
ホークスとしてはすぐにでもこの場所を包囲して決起を阻止したい気持ちはあった。しかし、そんなことをしても、各地に潜伏している十万人以上の解放戦線信奉者たちの対策にならない。だから、今はじっと我慢するしかなかった。
さらに、ヒーロー公安委員会の考えとして、決起に対する保険として、学生を使うこと、その準備としてのインターンが実施されていたことに対して、ホークスはあまり賛同的ではなかった。
しかし、その一方で、解放戦線が学生たちの力を甘く見ていることも事実だった。先日、エンデヴァーの下でインターンしていた緑谷、爆轟、轟が対応しようとしていた犯人たちをホークスが横取りしたことがあった。それは、学生たちの力を隠すためであり、その作戦は功を奏していた。
かつて、職場体験の時、常闇をあまり始動しなかったホークスだったが、ホークスに食いついて行こうとする常闇の姿勢から、後進たちの成長を感じ取っていた。だから、公安委員の考えには賛同しきれない部分もあったが、それでも、後進たちの育成に励むことも悪くないとホークスは思うのだった。
そして、解放戦線に関する情報を本へのマーキングの暗号と言う形で受け取ったエンデヴァー。公安委員会の指示したインターンの目的に、ホークス同様たどり着く。
エンデヴァーは自ら、インターンの三人を指導することを決める。
まず、手始めに、エンデヴァーは各自に課題を挙げさせる。
緑谷は自身の力の制御について、長々と話を始める。それを聞いたエンデヴァーは緑谷に自らと近い物を感じるのだった。それは、オールマイトの様に才能があるのではなく、地道に積み上げていくしかない者としての、共感だった。
次の爆轟は、出来ない事が無かったから出来ない事を探しに来た、というとんでもない傲慢発言を繰り出す。
エンデヴァーはそれを聞いて、実地へと赴こうとする。そこに水を差したのは、何も尋ねられなかった轟だった。轟は父・エンデヴァーに向かって、あくまでエンデヴァーを利用させてもらうためにここに来たと言い放つ。
エンデヴァーは、ならばと、あくまで轟を一人のヒーローとして見ると言った。
市街地のパトロールをしながら、エンデヴァーは講義を実施した。その中で、エンデヴァーはヒーローの仕事として「救助」「避難」「撃退」という三つをあげる。人によっては、どれかを分担しながら実施しているヒーローも多い中、エンデヴァーはその3つをすべてこなしているという自負と自覚があった。
そして、通信を受け取ると、エンデヴァーは即座に移動を開始する。そして、当て逃げ犯を即座に捕まえてしまう。
その際、火炎放射で犯人の道をふさぎ、大通りで被害を拡大させないようにしていたという気配りも明かされる。
さらに、エンデヴァーは一点集中で炎を噴出しており、それによって、高加速度を得ているという点に、轟は気づく。
即座に移動を開始するエンデヴァー。移動の中でも講義を行い、「授業と違い、失敗すれば命が失われる」と説く。そして、歩行者に突っ込んできたトラックを止めきる。
エンデヴァーはそこで、轟と爆轟に「個性を集中させて放出する」という課題を与える。それによって、さらに強力な移動能力を得るのだと説く。爆轟は「出来ない事が無い」と言っていたが、実際には、エンデヴァーに追いつくことも追い越すこともできなかった。
だから、まずはエンデヴァーを越えて見せろと発破をかけるのだった。
さらにその後、休憩をしながら、緑谷の課題について述べる。エンデヴァーは、緑谷にまずは、意識をしなければ使用出来ない空気弾「エアフォース」を無意識でも使える様になれと諭す。焦る緑谷は、それでは新規に発現した個性の操作の訓練にならないと反論する。
しかし、エンデヴァーはあくまで、こうして今できることを無意識でもできるように徹底して訓練していくことが必要だという。緑谷は現在、個性を操る際に様々なことに意識を向けなければならないとして、苦慮していた。だが、人間は訓練によって、無意識でもできるようになることは増えてくる。だから、まずは一つ一つ積み上げていくことが大事だと、語るのだった。
解放戦線情報開示
前回は「名前だけ出てきて一体何なんだよ」状態だった「解放戦線」でしたが、今回、情報が出てきました。
そして、当然の様に『敵役連合』のメンバーもいました。そんなに簡単に出しちゃうなら、もったいつけずに、前回出しちゃってもいいのではないかとは思いました。
とはいえ、解放戦線の根城内でのホークスの思考などもあり、時間がかかってしまうので、今回に先送りになってしまっていたのでしょう。
エンデヴァーの思考とラップするような演出も出ており、じっくりではあるものの、ホークスの活躍やインターンについての想いなどが語られていて、個人的には好きでした。
もちろん、ホークスが持ち上げられ過ぎて、他のヒーローがかすんでしまうような気は少なからずしています。なにしろ、内偵をしているうえで、人気・実力ともに伴ったNo.2ヒーローですから、スペックもりもり過ぎる感じがします。
ここまで何でもできると、内偵しているわけでもないのにNo.3以下だったヒーローたちが何もしていないかのように見えて、少しかわいそうに見えるほどでした。
積み上げてきた男・エンデヴァー
炎と言う恵まれた個性を持ちつつも、オールマイトと言う稀代のカリスマを持ったヒーローに敵わず、二番手の屈辱を感じ続け、家族を犠牲にし、覇道を作り上げようとした男がエンデヴァーでした。
『ヒロアカ』序盤では、轟への過剰な期待とそれに反発する轟と言う構図だったため、酷い父親と言う側面がクローズアップされてきました。
ただ、ここにきてヒーローとしてのエンデヴァーの株はかなり持ち上げられているような気がします。
ヒーローの3つの役割と、その3つを全てになっているという自覚にはリアルなヒーロー像がにじみ出ていた気がしました。
「限界を超えていくからヒーローなんだ」と言うのはある意味正論ですが、理想論的すぎて、具体的にヒーローに求められている物に対する回答にはなっていません。
ヒーローと言えば、敵をぶっ潰す側面が強調され、戦闘がフィーチャーされがちです。ですが、職業上のヒーローとしては、どんなに戦闘で強力であっても、周りに被害を出しまくる人間災害では困りものです。
だから、戦闘=「撃退」だけでなく、救助や避難へも気を配らなければならないというのはハッとさせられました。荒々しい男であり、戦闘さえ良ければ後はどうでもよさそうな外見、ふるまいでしたが、実は繊細に気を配っている男だったのです。
さらに言えば、オールマイトに敗北し、完全に膝をついてしまいながらも、努力を怠らなかったという側面もフィーチャーされました。すでにホークスからその点については指摘されていたこともありましたが、ここでまた改めて努力を積み上げていくことがクローズアップされました。
脳無との初戦闘の際には、空中を飛行する脳無に対して、ビルの壁を溶かしながら移動していましたが、 九州での戦闘の際には飛行を身に着けていました。これも、努力を積み上げてきた結果なのでしょう。
今回はエンデヴァーが緑谷、轟、爆轟に惜しみなく自らの知見を公開する回でしたが、そこで浮かび上がってきたのは「リアルなヒーロー」だったように感じます。
終わりに
エンデヴァーの語る「リアルなヒーロー」は、個人的にはツボで、ヒーローとしてのリアルさを描写してくれるところも『ヒロアカ』の1つの魅力なのではないかと改めて思いました。