ドムストの雑記帳

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狂った奴らの舞踏会!!【漫画 hellsing】レビュー

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漫画作品hellsing。それは私が最も好んでいる作品です。私に最も大きな影響を与えた作品はhellsingである、と断言できます。

 

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日常生活では全然語れなくてうっぷんがたまっている分をここでぶちまけて皆さんに興味を持っていただければと思っています。

 

 

 


万人が読める漫画ではない

まず最初に、決して万人受けしないのが平野耕太作品です。

皆さんに興味を持ってもらいたいと言っている傍から申し訳ないのですが
少しでもこういうディープな雰囲気のマンガを読み慣れていない相手に読ませようとすると、意味不明、と言われてすぐに返されてしまいます。なので、あまり期待せずに他人にお勧めして本を渡したりしています。

 

別に不条理だとか、シュールギャグと言う訳ではないです。バイオレンスな描写があることは認めあます。しかし、大抵はそこに到達する前に返されます。バイオレンスな描写に問題があるわけではなさそうです。

 

この辺の「何か無理」な感覚は、中々共有しづらいものです。私も「何か好きじゃない」アニメなどはありますが、その理由について、周囲に納得してもらえるほど理解はできていません。

 

 

内容に入る前に、普通の人には平野耕太作品を読んでもらえないことが多いという反省から、とりあえず、万人向けではないということを先に断ってみました。
ここから、hellsingの魅力を徹底して語りつくしたいと思います!


とにかく濃い画面


初期の画風に関しては、正直、hellsingのファンである私にとっても、擁護できないところがあります。正直ちょっと下手だ。
特に、足の長いキャライラストが(特に各話の表紙に)多発する。足さえ長ければいいという感覚で書いている気がしてなりません。ですが、画力は徐々に成長を続け、6巻ごろから如実に絵の質が上がり、8~10巻でほぼ完成の域に達します。
1巻と10巻を比べると、画風の成長が著しすぎて主人公など同一人物には見えないほどです。

 

初期から一貫して、画面を真っ黒に塗りつぶすのは氏の画風としては有名な話です。どのコマを見ても、(夜の場面が多いからだけではなく)画面は黒く塗られる。

最初は本当に、背景を黒で塗りつぶすだけの画面も多かったです。しかし、画力工場と共に、次第に、背景の書き込みが増えてきます。背景に小物が増えてきて、背景を黒く塗る手間が増えていそうでも、黒塗りは終りません。

 

圧倒的な白と黒の世界。その対比を見てしまうと、多くのマンガの画面に物足りなさを感じてしまいます。

 

闇夜の住人・吸血鬼を主人公に据えた物語である以上、黒くなるのは必然です。そして、濃く、リアリティよりも画面的な「映え」を重視した画面は、漫画と言うよりも、一枚一枚の絵としての迫力を持つものに仕上がっているコマも多いです。(多くは後半にですが)

 

私は、hellsingの後の連載の「ドリフターズ」も愛読していますが、hellsing8~10巻での技術からは少し落ちているとすら感じています。hellsingで丁寧に書き込まれた画面の圧は見てみなければわかりません。

 

濃ゆいキャラクター共

画風に負けず劣らず、登場するキャラクター共も濃いのです。

殺戮と狂気の中、絶望の拒否を何よりも尊ぶ精神を持つ主人公『アーカード』
神への歪んだ愛・狂信を捧げる宿敵『アンデルセン』
何よりも戦争を楽しみ、「私は戦争が好きだ」の大演説で知られる『少佐』

どこの勢力にも狂気バクハツな人物が存在し、「正義」というよりは「信条」をぶつけ合い、そして、散っていきます。

 

主人公『アーカード』は向かってくる敵は基本容赦なくぶちのめしていく。その凄惨な様は、「お前本当に主人公かよ」と疑いたくなるほどです。

 

『少佐』は自分が正気でないことを認めるような発言をしています。
一方で、他者が狂っていない保証もない、ということを指摘する。さらに、狂った人物に対しては、同じ土俵に上がった者同士として歓迎するような節すらあります。

 

『アンデルセン』は教義の為なら教祖すら手に描けるというキリスト教の原理主義者。化け物がはびこることを憎み、同じキリスト教でも分派であるプロテスタントは「異教徒」扱い。

 

常識的な感覚を持つ登場人物もいますが、

 

なお、狂喜狂気と言うと、常に暴走しているように見えるかもしれないが、皆いたって理性的に会話をこなす。

その内容がずれている、というか、会話の前提となる「価値観」が我々の知る倫理観と大分ずれているのだ。
彼らは彼らなりの価値観に殉じており、歯向かう者には容赦しないが、お眼鏡に叶えば、高く評価する傾向がある。
そのため、狂ってると言っても、常時わめいていたり、会話内容が意味不明、ということはない。だからこそ、全く違う価値観の土台から繰り出される論理的な解に唖然とさせられること請け合いである。

人肉を食ったり、人を解剖したり、血の着いたハンカチで興奮できたりする分かりやすい狂気ではないのだが、見た瞬間に狂気を感じられるキャラクターたちが


数少ないまともなキャラクターと言えるのがアーカードの主人『インテグラ』。しかし、彼女は無慈悲な決断を迫られ、それを発することのできる豪胆な人物として描かれます。
女性と言うことを強調されるでもなく、ひたすら、血なまぐさいストーリーの中で己の使命である「バケモノから国を守る」に殉ずる人物です。

お色気担当は別にいるから、という側面はあるにせよ、特に女性と言うことを強調されるでもなく、ひたすら鋼鉄の人物として描かれる様は、爽快感すらあります。

 

 

なお、キャラクターデザインには作者の趣味が爆発しており「手袋率」「眼鏡率」が異常に高いです。アニメ制作者たちは、このメガネのバランス一つに非常に苦悩し、これが崩れることで、狂気の表現がしきれないとうめいたそうです。

 

 

単純ながら丁寧ストーリー

ストーリはと言うとどちらかと言うと単調です。基本は殴り合う以外に何もないと言って良いでしょう。ハックアンドスラッシュ状態です。とはいえ、闘争の中において、それぞれのキャラクターの感情はしっかりと描写されます。これを丁寧と言うのと少し言い過ぎかも知れません。しかし、読んでいくとそこそこ丹念に描かれているのではないかと感じられます。

 

なので、やたら登場人物の割り切りが早くて現実感が無かったり、逆に、悩み過ぎてイライラしてくるということもありません。

特に、『インテグラ』は幾度となく決断を迫られるキャラクターです。『アーカード』に対しては、異なる状況において同じような命令を下すことになります。そのたびに、『インテグラ』は少しずつ異なる表情を見せます。鋼鉄の処女と称される彼女が一人の人間として、感情を持ち、行動していることが分かります。

 

とはいえ、結局は主人公が全ての敵を片っ端から殲滅していくのがこの漫画です。Wikipediaであらすじをネタバレされてから読んでも、苦しみはありません。

むしろ、Wikipediaの乾いた文章によって吐き出されるストーリーが、絵として、漫画として形を成すと、こんな風になるのかという驚きすらあるかもしれません。

 

Wikipedia等でシナリオを全部知ってからでも、画圧と個性的なキャラに驚かされるであろう本作。

なんといっても私の人生の中で出会った、最高のマンガのひとつであることは、間違いないと言えます。